ヴィラ=ロボス

エイトル・ヴィラ=ロボス(Heitor Villa-Lobos, 1887 - 1959)


ブラジル風バッハ

  • 第1番: 1930年。8本のチェロのための作品。
    • 3.3点
チェロ8本の合奏という特殊編成。3つの楽章に分かれている。チェロの情熱的で艶めかしくも渋い特性が見事に活かされた作品であり、音楽の新しい可能性を切り開いている。ショーロスを全て書いた後にこのシリーズは作り始められるわけだが、この曲はメロディーに通俗性がなく、マニアックであり決して分かりやすい曲ではない。標題のとおり確かにバッハ的な歌心や魂と骨太な力強さを感じるが、非常に奥深い部分でのインスパイアの成果物であり、表面的にパッと分かるものではない。そこがいいと思う。低音ばかりだが暗くはなく、独特の華があり、インスピレーションに溢れた曲。生で聞いたら感動しそう。

  • 第2番: 1933年。オーケストラのための作品。
    • 3.3点
特殊編成でないことによる面白みの少なさはあるものの、1番と同じくらい曲は良いと思う。バッハの微かなインスパイアをもとに、バスを効かせる威厳のパワーを情熱や深遠さに転換する独特の詩情を見せつつ、単一楽章の中で多くの場面をつなげていく。通俗性に墜ちずに、独創的な場面を続ける気力には感服する。不思議な魅力がある。

  • 第3番: 1934年。ピアノとオーケストラのための作品。
    • 3.5点
ショーロス11番よりもピアノ協奏曲としてはるかに成功している。かなりセンスが良くてカッコいい。ピアノの使い方にセンスがある。ブラジル風バッハらしいかっこよさを存分に活かしている。スケール感が良い方向に使われている。4つの楽章で33分にも及ぶ大作だが、自分はかなりゾクゾクしっぱなしで聴いた。ピアノ協奏曲でありながら、それに縛られしぎていないで楽想を豊かに提示しているのが見事だ。

  • 第4番: 1930-41年。ピアノ独奏曲。1941年にはオーケストラ作品に編曲されている。
    • 2.5点
あまりにも古典主義的すぎる。調性が明確すぎ、メロディーが分かりやすすぎ。それに見合う感動があるかというと、平凡すぎて感動も足りないと思う。あと、1曲目の前奏曲が長すぎてバランスも悪い。元がピアノ曲として構想されていたからか、声部が足りないのが原因かもしれない。

  • 第5番: 1938年(1945年に改訂)。ソプラノ独唱と8台のチェロのための作品。のちにソプラノとギターのためにも編曲されている。
    • 3.5点
女声の独唱の艶めかしい情熱の表現は、流麗な前半も、妖艶な後半も印象的でゾクゾクするような魅力がある。冒頭のヴォカリーズは有名だそうだ。一般的な名旋律というものではないにしても、何か不思議と心を捉えて記憶が上書きされない魅惑的なものがある。ブラジル風バッハの一連の作品はある程度連作としての雰囲気も含めた類似性があるが、その中で魅力的という点で成功していると感じる。コンパクトなのも良い。

  • 第6番: 1938年。フルートとファゴットのための作品。
    • 3.3点
軽妙な管楽器の二重奏が愉しい。ブラジル風でありバッハの香りもほのかに感じる。ごく気楽に楽しむ曲。ブラジル風バッハの音楽の素の部分が明確になる分かりやすい曲。情熱的なメロディーと対位法的な扱いの妙や、リズムの扱いが面白い。

  • 第7番: 1942年。オーケストラのための作品。
    • 2.8点
新古典主義的どころか、映画音楽的な軽さとおおらかさが多くの部分を占めている。あまりバッハ風を感じない。ある種のダイナミックさを楽しめるとは言えるが、これでは他の作曲家でも書けそうだ。かなり平明な音楽だ。せめて同じ平明でももう少し濃厚さがないと物足りなく感じる。生で聞けばそれなりに楽しめるであろう娯楽性はある。

  • 第8番: 1944年。オーケストラのための作品。
    • 2.5点
7番に似た印象である。少しリズミカルで複雑さは高いが、なんだがNHK大河ドラマの音楽のようにも聞こえてしまう安易なノリの良さやコブシの聞き方と壮大さだと感じてしまう。音の密度が薄い。生で一度聴く分には楽しめるかもしれないが、それ以上の価値を感じない。

  • 第9番: 1945年。無伴奏合唱、または弦楽合奏のための作品。
    • 2.8点
弦楽合奏版で聴いた。情熱的なねちっこいフレーズをとにかく対位法的にひたすら重ねて繰り返す曲。7番8番があっさりしているのとは対照的だが、あまりにもコブシが効いていてしつこくて、うんざりしてしまう。タイトル通りちゃんとバッハ風であるのは良いことだと思う。しかし、何度も聴きたいという感じの曲ではない。

ショーロス

  • ギターとオーケストラのためのショーロスへの序奏: 1929年。

  • 第1番: 1920年。ギター独奏曲。
    • 4.0点
ギター独奏の4分の小品で、この後のショーロス作品群とは大きく構成が違う。それにしても、非常に素敵な名曲だと思う。ギターの魅力を最大限に発揮しており、素敵なメロディーで何度も聴きたくなる。渋くて哀愁のあるメロディー。

  • 第2番: 1921年。フルートとクラリネットのための作品。
    • 3.3点
2分台の短い曲。音が幻想的に飛び跳ねて2本の管楽器が絡んで、面白いと思ったらすぐに終わる。特に統一感がないので、ちょっとしたスケッチくらいの即興曲に聴こえる。とはいえ、ブラジル風味が新鮮さを感じさせてけっこう楽しめる。

  • 第3番「きつつき」: 1925年。編成は、男声合唱、クラリネット、サクソフォン、ファゴット、ホルン 3、トロンボーン。
    • 3.3点
独特のリズミカルでエキゾチックな伴奏を管楽器と合唱で行って、そこに別の粘り気のあるメロディーをやはり管楽器と合唱で被せていく。何かの儀式でも執り行われている現場のようだ。とても奇妙な面白い曲。土俗的なようでいて洗練されている。

  • 第4番: 1926年。ホルン 3、トロンボーンのための作品。
    • 3.3点
エキゾチックな不思議な音楽。やはり愉しい。ホルンとトロンボーンということで機動力に欠けるのだが、その代わりにおおらかな包容力とコミカルさがあって、それがまた楽しい。最後に分かりやすいメロディーになって締めるのが可愛い。

  • 第5番「ブラジルの魂」: 1926年。ピアノ独奏曲。
    • 3.5点
前半は普通の曲である。最初はかなり暗く始まり、エキゾチックさもなくて、ショーロスを連続で聴いているとちょっとガッカリする。中間は爆発して面白くなる。その後にまたメロディーに戻るとこの哀愁にしみじみと浸れるようになり、通俗的だがかなりいい曲かも、も思えるようになる。もしショパンやラヴェルが作曲者なら有名になっていたのではないか。

  • 第6番: 1926年。オーケストラ作品。1928年にヴァイオリンとチェロによる補遺が作曲されている。
    • 3.3点
5番までと違い、フルオーケストラで演奏時間も長い。長いのは、沢山の場面に分かれているからで、統一感がある構築物という感じではない。ディズニーシーの出し物の音楽に使えそうな、ドリーミーで素直で明るく楽しい音楽であり、ヴィラロボス風味は薄い。通俗的な場面も多いが、バラエティーの豊かさと、次々と繰り出されるメロディーの楽しさが素直にエンターテイメントとして楽しめるものであるのも事実である。

  • 第7番: 1924年。フルート、オーボエ、クラリネット、サクソフォン、ファゴット、ヴァイオリン、チェロ。
    • 3.0点
薄い音の重ね方で、エキゾチックな音世界を作るいつもの手法だが、音はいつも通り面白い。音型や楽器の重ねかた、メロディーは即興的に変化し続ける。ストラヴィンスキーのような野蛮主義的なリズムも登場する。実に多くのアイデアが詰まってはいるのだが、おおまかな印象があまり変わらないままなのが、統一感はあるものの、飽きてしまいイマイチと思った。

  • 第8番: 1925年。2台のピアノとオーケストラ。
    • 2.8点
フリーダムで野蛮主義的なリズムの上で、各楽器がフリーに演奏する趣の曲。雰囲気は深夜のジャングル奥地の動物の宴のようで面白い。しかし、自分の好みとしては、ちょっと統制がなさすぎて面白くない。あちこちから新しい音が鳴ってかき乱し、カオスになりかけることが続く。一部分だけならよいのだが、ずっと安定しない状態が続いてメロディーもないので、疲れる。

  • 第9番: 1929年。オーケストラ作品。
    • 3.3点
6番同様にフルオーケストラを使った25分程度の曲であり、様々な場面をつなげたものだが、もっとヴィラロボスらしい情熱、ブラジルの熱気をダイレクトに表現した場面が多くて、通俗的な場面はない。リズムが強烈な場面は長いが、全然リズムが無くなる箇所もあり、実にバラエティーに富んでいる。リズムがメインの場面が多いためバレエ音楽みたいに聴こえる。残念ながら、長すぎて後半は飽きてきてしまう。

  • 第10番「愛情の破れ」: 1925年。合唱とオーケストラ。
    • 3.3点
かなり強烈な曲だ。前半のオーケストラだけの時から、情熱的なフレーズが主体だ。まさに副題の「愛の破れ」がしっくりくる雰囲気の音楽。中間に合唱が入ってからがすごい。強烈な野蛮な音の塊を合唱で執拗に繰り返す迫力に圧倒される。恐ろしいエネルギーで恐怖を感じるくらいだ。そのままボルテージを上げて終了する。

  • 第11番: 1928年。ピアノとオーケストラ。
    • 2.8点
ピアノ協奏曲で合計なんと1時間もある。同じタイトルなのに1番や2番となんと規模がかけ離れていることか。ピアノ協奏曲という形式のせいか、リズムの愉しさが足りないため、ショーロスの中ではあまり面白くない気がする。そきて何より、あまりに長過ぎる。様々な場面が展開しており、彼の音感の良さは楽しめるし、ときどき魅力的な場面はある。しかし、全体的なイメージとしては、やや凡庸な場面が多い気がする。ピアノ協奏曲はやはり表現の幅の限定度合いが大きい。オケのみのパートの方が好きだ。

  • 第12番: 1929年。オーケストラ作品。
    • 2.8点
映画音楽のように聴こえる。やや切れ味が鈍い感じがする代わりに通俗的なエンターテイメント曲という印象だ。長い演奏時間で多くの場面をつなげているし、面白いことをやっている箇所も多いのは、9番以降と同じなのだが、この曲は何かが物足らない。やたら重低音が効いていたり、低音の持続音があったり、壮大すぎたり、スペクタクルすぎたり、安心感がありすぎたり。とにかく映画音楽的なムードの場面が多すぎる気がする。細かな違いではあるのだが、他のショーロスより好みでなかった。

  • 第13番: 1929年。2つのオーケストラと吹奏楽。
楽譜紛失。

  • 第14番: 1928年。合唱、オーケストラと吹奏楽の作品。
楽譜紛失。

  • 補遺: 1928年。ヴァイオリンとチェロ。

交響曲

  • 第1番「知られざるもの」: 1916年。
    • 3.0点
映画音楽にかなり近い。娯楽性が高い享楽的な音楽である。しかし、そのなかにも時々シリアスな匂いを漂わせること、多楽章の切れ目を使って構築されたところが交響曲らしいといえる箇所か。未知の大いなるものへの畏怖や巨大さや翻弄される感じの気分が全体を覆っており、その雰囲気を楽しめる曲であるが、逆に一本調子なところもある。

  • 第2番:
    • 3.0点
まさに古い映画音楽そのものという場面が大半である。そして、クライマックス場面や盛り上がる重要場面のようなテンションの箇所がものすごく多い。情熱と発想の尽きない豊かさには感服するものの、さすがにうんざりしてしまう。1時間近くもあり長すぎでもある。とはいえ、4楽章に分かれた映画音楽と思って軽い気持ちでバックグラウンド音楽のように聴く分には、それなりに楽しめて、つまらなくはない。交響曲という感じでは全然ない。

  • 第3番:
    • 2.8点
少し交響曲らしい抽象性や構成感が出た気もする。しかし、3楽章は古い映画音楽にかなり近い。4楽章は宇宙モノの映画音楽のようで大胆に躍動する壮大な輝かしさはなかなかの聞きものである。心に刺さる場面は少ないが、3楽章後半と4楽章後半はそれなりに良いなと思わせる。特に4楽章のド派手すぎる面白さと輝かしさはそれまでの楽章の不満を打ち消すものがある。ラマルセイエーズが使われている。

  • 第4番「勝利」: 1919年。
    • 3.0点
連作である3番と比較して、奥ゆかしい難解さや神秘性をもった曲であり、ずっと好みである。凄みはないものの、軽薄さや物足りなさにイライラすることはなく、音世界に十分に浸ることができる。もちろん南米らしい開放感や情熱を基調にしたエンターテイメント的なものではあり、ドイツ的な硬くて生真面目なものとは全然違うのだが、この音世界ならばヴィラ=ロボスならではの交響曲として受け入れやすいと感じた。最後の盛り上げ方もよい。

  • 第5番: 紛失

  • 第6番:
    • 2.5点
ところどころに感心する瞬間はある。しかし、全般に流れるB級音楽の雰囲気はどうしようもない。とても一般的な交響曲のように作曲者が力を入れて書いた曲とは思えない。思いつくがままに筆を進めたのではないかと想像する。感動しないし使われている素材が悪く、大作曲家の曲というオーラは少ない。

  • 第7番:

  • 第8番: 1950年。
    • 2.5
少し耳に引っかかる良さのある場面はあるものの、全体には気力と創作力の減退を感じてしまうような、何をしたいのかよく分からない惰性で進む音楽が続くように思われる。音はいろいろ鳴っているのだが、若いギラギラと情熱が少し衰えたのに代わる何らかの良さが足りない。心は若いまま身体が歳を取った感じである。

  • 第9番:
    • 2.8点
近代管弦楽法で、華やかに鳴らし続ける曲。この曲までは曲を追うごとに長さが短くなり続ける。コンパクトなのと手際の良さと派手さで、とりあえずそこそこ楽しめる。聴き惚れる部分は少しあるものの、曲に込められた意義深さのようなものはほぼ無いと思う。

  • 第10番: 1955年。
    • 3.3点
この曲は大作で1時間近くであり、合唱や独唱も入っている。最初の方はオケが多いが、歌が始まってしばらく経ってからは歌唱が主役になりオラトリオに近い。強烈な刺激的な歌が多くて、次々と新しい場面に変わるたびに新たな気分で楽しめる。長尺な時間を活用した自由さを活かした才気活発さとスケールの大きさと表情の豊かさはかなり素晴らしい。ヴィラロボスにしか書けない世界の一つがここにある。

  • 第11番: 1955年。
    • 3.0点
微妙な違いであり何となくであるが、この曲は珍しく思索的であり、つまり享楽的に音の流れに身を任せるだけでない気がする。その点で交響曲らしいと感じるため、それを楽しめた。老齢に達して心境の変化があったのだろうか?と想像しながら聴いた。短くてコンパクトな曲であり、曲調の面白さと多少の変化だけでも飽きずに楽しめる。ただ、後半は勢いに任せる感じが強くなってくるが、それでも何かもったいぶりつつ、何かを考えさせるものを内包している気がする。

  • 第12番: 1957年。
    • 2.8点
この最後の交響曲は、なぜか評価を一言に総括しにくいものを感じる。全体としてはB級の曲であることは間違いないのだが。冒頭楽章はもう爺さんなのになんという音の畳み掛けだろうと辟易する。スケルツォが妙にいかにもスケルツォらしいとか、雑感だけが浮かびながらなんとなく聴くしかない曲という気がする。その散漫なような首尾一貫しているような捕らえどころのないのが、ある意味でヴィラ=ロボスらしい曲とも思える。

管弦楽曲

  • ニューヨーク・スカイライン・メロディ (New York Skyline Melody):1939年。図形楽譜の手法で作曲された作品。

  • 浸食−アマゾン川の水源 (Erosion - The origin of the Amazon River):1951年。

  • 序曲「熱帯林の夜明け」 (Overture "Dawn in Tropical forest):1954年。

協奏曲

  • ピアノと管弦楽のための組曲:1913年

  • ピアノ協奏曲第1番:1945年

  • ギター協奏曲:1951年
    • 3.0点
ギターらしい音のセンスの良さはかなり感じる。さすがだと感心はする。しかしながら音楽としてはとりとめもない感じのままうつろう雰囲気を楽しむ程度であり、明確な表現の可能性への強い意志を感じない。だから、協奏曲としての強い印象を受けないまま曲が終わってしまう。最初は協奏的幻想曲として構想されたというのはなるほどと思った。

  • ハープ協奏曲:1953年
    • 3.0点
ハープを控え目にせずギンギンに鳴らしていく印象。内的情熱エネルギーに満ちた音楽にハープも乗せてしまっている。ハープらしい優雅さに欠けている気がしなくもない。長いカデンツァだけがやたらと優雅なのは笑った。浅い音楽で旋律の魅力も少ないが、ハープの前面に立った活躍度合いの高さと通常の楽器のイメージとのギャップを愉しむ曲と思った。

  • ハーモニカ協奏曲:1955年
    • 3.3点
郷愁や子供時代の回想のような雰囲気がずっと続く。ハーモニカは鳴り始めてからはずっと前面に出続ける。楽章が違っても楽器の限界からかさほど根本的な雰囲気の違いはない。3楽章の踊るようなパッセージが最高で、幼稚園の純粋で素朴な心に戻れるかのようで、心の琴線をギュッと掴んで弾かれたような気分になった。また聴きたい。

室内楽曲

弦楽四重奏曲

  • 第1番(1915 )
    • 3.5点
テンポが早い訳ではないのだが、南米らしい情熱とむんむんとした熱気を感じさせて楽しい。六楽章もあるのでバラエティーに富んでおり、組曲のようで聴きやすい。音楽は調性的でメロディアスであり、かなり分かりやすい。

  • 第2番(1915 )
    • 3.3点
1番とはかなり雰囲気が異なり、近代フランス音楽のような流麗で色彩的な音楽である。音楽の輪郭がいい意味でやや曖昧になっていて雰囲気がある。

  • 第3番(1916 )
    • 3.5点
2番と同系統の音楽だが、弦楽四重奏の扱いが非常に巧みになった印象があり、楽器の使い方や音の重ね方だけでも楽しめる。

  • 第4番(1917
    • 3.3点
1楽章はいまいち。2楽章の郷愁と熱気をはらんだ美観の描写はかなり美しい。3、4楽章はいい音楽だがヴィラロボスの弦楽四重奏曲としては標準的で特別展な感動はない。

  • 第5番(1931 )
    • 3.0点
短い曲。作曲技巧が凝らされた複雑で現代的な響き。リズミカルさやゴージャスさなど、演出は良い。ただ、初期の作品のような素直に素晴らしいと思える感じに欠ける。

  • 第6番(1938 )
    • 3.3点
リズミカルにザクザクやるより、おおらかで広大な空間の広がりを各楽章で感じるのが特徴。3楽章が美しい。4楽章も面白い。近代フランスのような響きにブラジル風味を加味した音楽ベースなのは変わらない。

  • 第7番(1942 )
    • 3.3点
この曲はかなり長い。曲の中の時間の流れもゆったりである。そして非常に官能的。1、2楽章は艶めかしい感覚が非常に強い。3、4楽章はそれは弱くなる。4楽章は冗長一歩手前の壮大さであり、次々と繰り出す楽想で冗長にならず最後まで乗り切っている。

  • 第8番(1944 )
    • 2.5点
行くあてのはっきりしない、どこに行けば分からず彷徨うような楽想が全楽章を支配しており、すっきりしない。正直少しイライラする。近代的な響きもそれ程効果的に機能していないと思う。

  • 第9番(1945 )
    • 3.0点
1楽章ははっきりしないようでいて、一応構成感があり安心する。2楽章はヴィラロボス節でいつもながら素敵。3楽章はふらふらしているだけでイマイチ。4楽章は早くなく中庸のテンポであり、何か大きなものにつき動かされるような感情がある。最終楽章にもってくるアイデアが面白いし感動する。

  • 第10番(1946 )
    • 3.0点
1楽章はくつろいだ気分がする。2楽章以降は密度も緊張度が高く、不協和音で人間の精神の奥深い部分をえぐるショスタコーヴィチを彷彿とさせる場面が多く登場する。それでもブラジルらしい精神があるので、ショスタコーヴィチほど根暗にはならない。

  • 第11番(1947 )
    • 2.5点
全体に大味で感心出来ない印象が強く、あまり良作とは思えない。フレーズを大雑把に組み合わせているだけと感じる部分が多いと思った。

  • 第12番(1950 )
    • 2.5点
雰囲気は悪くないのだが、茫洋として掴みどころがなく、なんとなく時間が経過していってしまう。いろいろな事をやっているようでありながら、どうにも印象に残らない。

  • 第13番(1951 )
    • 3.5点
この時期の他の弦楽四重奏曲と同様に相変わらずカルテット書きとしてのセンスだけで曲を書いていて、行き当たりばったりだと聞いていたら、9分ある3楽章が非常に素晴らしくて驚いた。艶めかしく、神秘的で、ぞわぞわと胸の内側を地味に刺激するような、皮膚の裏側からじわっと熱くなるような、とても不思議で魅力的な音楽。4楽章な不思議なエネルギーがあり、3楽章の続きとしては悪くない。

  • 第14番(1953 )
    • 2.5点
所々ブラジル的な空気にはっとするような場面はある。2楽章など対位法的な場面も気になる。しかし、全体としては突き抜ける感じが無く、近い番号の他の曲と同様に物足りない。

  • 第15番(1954 )
    • 2.8点
現代音楽の手法を取り入れたと思われる箇所が印象的だが、一方で明快な分かりやすさが復活している場面も多い。そのふれ幅の大きさゆえに、14番までより少し面白さを増している。晩年の影を感じる。

  • 第16番(1955 )
    • 3.0点
15番より晩年らしさを増しており、人生の終焉の予感を感じさせる悲しい音楽になってきている。単純化の方向も15番より進んでいる。不思議と心に刺さる音楽。

  • 第17番(1957 )
    • 3.0点
最後の弦楽四重奏曲は、さらにシンプルになりフランス近代に戻ったかのような雰囲気。2楽章の寂寥感はぐっとくる。シンプルでほっとするとともに、作曲者の活力の衰えの結果なのかと想像する悲しくもある。シンプルなので曲に入り込みやすい。

その他の室内楽曲

  • 神秘的な六重奏曲:1917年。フルート、クラリネット、サクソフォン、チェレスタ、ハープ、ギター
    • 3.5点
まさに神秘的な響きである。洞窟の奥で見つけた光っている誰も見たことのない宝石のような印象である。特殊編成と音の使い方が生み出す神秘的な響きは、揺らぎながらもその雰囲気を最後まで保っている。楽章がない曲なのが残念なくらい、編成が成功している。なかなか面白い曲である。

  • 五重奏曲:1928年。フルート、オーボエ、イングリッシュ・ホルン、クラリネット、ファゴット。

  • ソナタ・ファンタジア第1番:1912年。ヴァイオリン、ピアノ。ソナタ・ファンタジアは全4曲。

  • 花の分類:フルートとギター。


ギター曲

ヴィラロボスのギター独奏曲は全部でCD1枚分しかないが、全てが名作である。ここには書いていないが、ショーロス1番もギター独奏曲である。

  • ブラジル民謡組曲
    • 4.0点
ギター独奏の組曲。全5曲。内容的にはポピュラー音楽に近くてクラシックの芸術音楽という感じは少ないのだが、とにかく5曲ともエキゾチックでギターらしい魅力がいっぱいで素晴らしい。特に最初の2曲はあまりに良くて感動しながら聞きほれてしまう。

  • ギターのための12の練習曲
    • 3.5点
練習曲らしいテクニックに重点が置かれた短い曲の曲集。観賞用としても多彩でブラジルらしさもあり十分に楽しめる。

  • ギターのための5つの練習曲
    • 3.5点
12の練習曲と比較して、まったりとしていて風情を重視する曲となっている。いかにも練習曲という感じではない。どの曲も良作であり観賞用として楽しめる。


ピアノ曲

オーケストラや室内楽の作曲家と思いきや、ピアノ曲はかなりテクニカルである。

  • 花の組曲Op.97:1916-18年。【1.夏の牧歌/2.歌う村娘/3.庭園での喜び】

  • 赤ちゃんの一族 第1集「赤ちゃんの家族」:1918年。
    • 3.5点
いい曲が多くて、20世紀のピアノ曲集の中でなかなかなのレベルにある。

  • 子供の謝肉祭:1920年。

  • 赤ちゃんの一族 第2集「小さい動物たち」:1921年。

  • ブラジルの詩:1936年

  • 最終更新:2017-02-22 01:39:55

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