バーバー
サミュエル・バーバー(Samuel Barber、1910 - 1981)
交響曲
- 交響曲 第1番 ホ短調 Op.9 (1935~36/1943改訂)
- 3.0点
明確な和声と構築感は19世紀的だが、それに安住するわけではなく、ロマン派的な感性にプラスして20世紀的な新鮮な叙情性がある。初期の作品なのでまだ個性の確立が足りない感じがあり、素晴らしいという程の場面は少ない。単一楽章といっても、楽章の区切りは割と明確に感じられるので、聞きやすい。
- 交響曲 第2番 Op.19 (1944/1947改訂)
- 3.0点
複雑で前衛的な響き、バーバリズム、オスティナートなど、意欲的な作品。激しさに圧倒される場面もある。しかし、まとまりと交響曲らしい総合性にどうにも欠けるので、聞き終わった後に物足りなさが残る。バーバーらしい洗練された知性は楽しめる。
管弦楽曲
- 序曲『悪口学校』 Op.5 (1932)
- 3.0点
バーバーらしい切れ味の良さと現代的な管弦楽の機能のさせ方を楽しむ曲だと思う。旋律に魅力はないし、強く印象に残る場面もないが、管弦楽でここまでできるのかという20世紀のスピード感に合わせた音楽の機動力には驚く。
- 弦楽のためのアダージョ Op.11 (1937)
- 3.8点
悲劇的なドキュメンタリー番組のバックグラウンド音楽のような曲。これが一番有名というのも作曲者には可哀想な話だ。とはいえ、非常に分かりやすいメロディーの流れの中に、純音楽としての和声等の工夫が忍ばせてあり、決してつまらない曲ではない。たまに聴きたくなる。
- オーケストラのためのエッセイ第1番 Op.12
- 3.0点
2番や3番と違い、悲劇的で重厚な曲。断片的な切り取り方の感じは共通だが、この重さはエッセイという響きには合わない気もする。
- オーケストラのためのエッセイ第2番 Op.17 (1937)
- 2.5点
ライトな音楽であり、映画音楽に聴こえる。軽快で、電車から見る自然の風景のような感じの雰囲気は悪くないが、心にぐっとくるものはない。
- 夜間飛行 Op.19a (1964)
- 3.0点
テーマが明確な音楽で、夜間飛行の小説のことは知らないが、場面とシチュエーションが目に浮かぶようである。この場面の作り方はカッコいいし、徹底的であるとともにキレが良いと思う。音楽としては渋いのだが、渋さが目的になっていないのがよい。渋いのにワクワクゾクゾクするような所がある。
- オーケストラのためのエッセイ第3番 Op.47 (1942)
- 2.8点
映画音楽のような軽さのある曲。軽いテーマで書いた、断片的な情景の描写の曲と考えると、エッセイという命名はなるほどと思う。2番よりは内容がある。
- クリスマスに Op.37 (1960)
協奏曲
- ヴァイオリン協奏曲 Op.14 (1939~40)
- 3.3点
抒情的であるとともに、アメリカ的なすっきりとした開放感と現代性があり楽しめる。技術をひけらかさず、高音も少なく耳に優しくて、歌わせる場面が多いのも好感度が高い。凡庸さはほぼなく、突き抜けた感じを楽しめる。2楽章の冒頭の旋律はなかなか良い。洗練された垢抜けた感じと抒情というバーバーの美点が活かされた好作。
- カプリコーン協奏曲 Op.21 (1944)
- 2.5点
カプリコーンという楽器があるわけではなく、曲の愛称のようなものである。フルート、オーボエ、トランペットと弦楽合奏。全3楽章14分。協奏曲という感じは少ない。即物的で新古典主義のような音であり、ストラビンスキーを連想する。音としては面白いものが続くが、よく理解出来ないまま次々と雰囲気を変える。他のバーバーの曲と大きく異なる雰囲気。
- チェロ協奏曲 イ短調 Op.22 (1945)
- 2.3点
1楽章はかなり難易度が高そうなのは分かるが、曲が全然頭に入ってこない。前衛的ではないのに理解できない。2楽章も3楽章も同様であり、凡庸を拒否していることは分かるが、あまりに心に刺さるものが少なくて、まとまりのようなものも表現したい対象に対する意思も感じられず、楽しめない。
- ピアノ協奏曲 Op.38 (1961~1962)
- 3.5点
1楽章はプロコフィエフを彷彿とさせる切れ味鋭いモダニズムを混ぜた技巧的な楽章。2楽章はラヴェルのピアノ協奏曲を思い出す素朴で透明感のある曲。切ない後半部分には強く胸を締め付けられる。3楽章は野蛮な速いテンポの5拍子の曲で凄くカッコイい。
- オーボエと弦楽のためのカンツォネッタ Op.48 (1977~78)(オーボエ協奏曲の緩徐楽章として計画。未完。オーケストレーションはチャールズ・ターナーが補筆。)
室内楽曲・器楽曲
- 弦楽のためのセレナード Op.1 (1929/1944弦楽オーケストラ編)
- 2.5点
やけに悲劇的なセレナーデである。何をしたいのか掴みどころがなく、なんとなく曲が進んで終わる。新奇性も感じられず、習作の感が強い。
- 弦楽四重奏曲第1番 ロ短調 Op.11(1936/後に第2楽章を編曲(弦楽のためのアダージョOp.11))
- 3.3点
1楽章はなかなか切れ味があって、そこそこ楽しめる。2楽章は弦楽のためのアダージョ。各楽器が1台だと音の厚みが足りないから、合奏版の方が良いと思う。孤独感のあるチェロの旋律部分はいいかもしれない。3楽章は静と動の対比がすごい。締めもかっこよくてなかなかしびれる。2楽章と3楽章は優秀。
- 弦楽四重奏曲第2番 (1948)
- 夏の音楽 Op.31 (1956)
- 3.0点
管楽器の自由な音の絡みの幻想性が楽しい。思ったより長く続く。各楽器がバラバラに動くようでいて、統一されて、またバラバラになるのを繰り返す。それに翻弄されながら変化についていくのを楽しむ曲とも思った。
- ヴァイオリン・ソナタ (1931)
- チェロ・ソナタ Op.6 (1932)
- 3.0点
チェロの響きの活かし方のバランスが良い。曲は1楽章に関してはかなりロマン派に近く聞きやすく、なかなかのチェロ作品。ところが3楽章はモダンな響きが強くなり、なんだか掴み所のないよく分からない変な曲になってしまう。
ピアノ曲
- ピアノ・ソナタ 変ホ短調 Op.26 (1949)
- 4.0点
ラフマニノフやスクリャービンを消化した現代的な洗練されたピアニズムと超絶技巧。無調的なモダニズム的な感覚と、その基盤となるバーバー的なロマンチシズム。どの楽章もカッコ良くてキレが良くて、センスも良い。1楽章と4楽章のかっこよさは特に凄い。間違いなく第二次大戦後を代表するピアノ曲。
- バラード Op.46
- 2.5点
スクリャービンの影響で書いたのは一聴で明らか。より知的で都会的だが、ドロドロしたものが無く、何より単純に音数が足りない。
- 最終更新:2016-12-17 00:31:49